今回は、アラスカの南に位置するアンカレジに空路入り、徐々に北上する計画。
あのマッキンリーがそびえるデナリ国立公園で数日動物を狙った後は、アラスカのほぼ中央に位置するフェアバンクスを基点とし、自分としては通いなれたダルトンハイウェイ沿いで撮影に挑戦する。といっても「オーロラが現れる季節以外」に向かうのは初めてである。白夜の季節、オーロラの代わりに「蚊の大群」が待っているらしい。養蜂家がかぶっているようなネットも用意していた。きっとこれで乗り切れるはずだ。
一週間くらいは戻って来ない予定なので、フェアバンクスの大型スーパーで食料を買い込む。短時間で炊事ができるような献立を想定する。蚊取り線香やその他の虫除けが効力を発揮しなかった場合、炊事は修羅場と化すだろう。または、炊事を断念して食べないか、どちらかである。

フェアバンクスを北上、2時間も走り、はじめてダルトンハイウェイが始まる。
今回はオーロラが目当てではないので、撮影対象を探しながらの気ままな進み方である。
いつになったら最北までたどり着けるやら。

ユーコン川。
この場所では冬に来ると、河の上は真っ白な平地になっているが、雪解け水が集まってくるこの季節は、さすが世界有数の大河と思わせる。雪解け水はここから先、まだまだ長い旅をし、ベーリング海に注ぐ。
私はカナダのホワイトホースにもよく訪れるが、このユーコン川の上流がある。
その辺では流れが早いが、このような大河になるとは想像もできない。

撮影の目的として、ヤナギ蘭(Fireweed)の大群生を期待していた。その最も期待できる時期に訪れたはずだが、やはり早いようであった。ただ、意外にも北上するに従って燃えるような赤紫色が目立ってくる。

極北の地ではしばしば森林火災が起こるが、そのあとで真っ先に大地を占領するのが Fireweedである。思わず「生命力」という言葉が浮かんでくる。

道中、晴れたり、スコールのような雨が降ったり、めまぐるしく天候も移り行く。
雨が激しいと、道路もドロドロになり、滑るようになる。冬の運転よりも危険であると感じる。

天候が不安定なときは、空が面白い。なぜ、こんなに雲が発達するのだろうか?
日中の気温は20度前後まであがっているようである。寒くも暑くもない。

ブルックス山脈に突入。すでに深夜の0時であるが、太陽は沈んでいない。

向こうからスコールがやってくる。大地が広大で見晴らしが良いので、どこで雨が降っているか、どこで晴れているか、よくわかるのだ。
雷も地面を伝わって響いてきた。追いつかれないように、先を急ごう。

ブルックス山脈を越えるとノーススロープといって、見晴らしの良いツンドラの大地が広がり、森林はまったく見られなくなる。ここにもFireweedが咲き始めた。

この美しい光景とは裏腹に、撮影するときは、一瞬にして蚊の大群に囲まれてしまう。ネットはかぶっていても我慢できなくなる。ツンドラにいる吸血軍団は、動き回っていてもジーンズの上から刺してくる。

見渡す限りツンドラの大地が広がる。北上するに従って湿地帯も増え、蚊の数も多くなっているよう
に感じる。

もうフェアバンクスから600kmは北上している。遥か向こうには北極海があるのだ。

微笑ましい光景。この地でも「カラス」に気をつけなくてはならないのだろう。

たかがカラスである。しかし極北のカラスは、日本のカラスと大きく違い、決して邪魔者扱いを受けていない。むしろ崇められているのだ。大きさも一回りくらい大きいような気がするが、もっとも違うことは、鳴き声が美しい!ことだろう。信じられないと思うが、うっとり聞き入ってしまうほどである。

北緯69度付近は、秋にも冬にも蜃気楼を見かけるが、夏の季節にもしっかり見られた。
いつでも見られるのだ。地平線付近のものは、みな浮き上がって見える。

Midnight Sun。
これでも深夜の2時前後。
北緯69度、北極圏の太陽は、夏至の頃は太陽がまったく沈まないのだ。
大地が暗く映っているが、実際はとても明るいので「夜」と感じることが難しい。

おわかりになるだろうか?
画面に写り込んでいるのは、あの厄介者の蚊である。日本の蚊よりも遥かに体格が大きい。

車の中から窓越しに外を写している。人間が車外に出ると奴らはもっと反応する(喜ぶ)ので、これより遥かに密度の高い大群に囲まれる。
皆さんも挑戦してみてはいかがだろうか?

さらに北上、あと50kmほどで終点のDeadhorseの所まできて、ついにカリブーの群れに出会った。かなり遠くまで確認でき、およそ数百頭の群れである。

夏は子育ての時期。彼らも蚊と戦っているのだろう。がんばれ、ちびっ子!

上の写真には蜃気楼が見える。

成長途中の角は、触ってみたくなるようなベルベット状である。
なおカリブーは雄も雌も角を持つが、雌は冬のみ生えるらしい。

<写真 23>
ついに折り返し地点のDeadhorseまで来る。
私は今まで何度かここへ来ているが、冬場はブリザードを乗り越えてやっと到着したという達成感を持つが、今回は蚊の群れから逃れたという気持ちだ。

深夜2時の太陽。
ここはおよそ北緯70度という高緯度。地球儀で見ると、地球のてっぺんという感じさえする。湖の氷がまだ融けていないのである!
明け方の気温は5度を切る。寒い。

Deadhorseの町は、この目と鼻の先にある「油田基地」の準備的な集落で、私は女性•子供の姿をほとんど見たことがない。油田基地に関わった企業しか存在しないのだと思う。
そしてアラスカのてっぺんにあるこの町は、カリブーの通り道なのだ。

私もカメラを持って、カリブーに近づく。我慢しきれなくなり一頭が走り出すと、残りもみなつられて一斉に走り出す。
ところが、逃げたと言っても、少し走ったところでまた草を食む。
逃げることをすぐ忘れているのではないだろうか?

深夜の2時に「夜中の徘徊」をしているカリブーが、いきなり私の目の前を通過する。
「おおっ!」
私もすかさず追跡を開始。

逃げたはずが、すぐに立ち止まって食事を始める。
私もしばらく撮影させてもらう。「ありがとう」

朝になって、先ほど目の前を通過して撮影させてもらった3頭が、再び私の目の前を通過!
「おおおっ!!」
慌てて追いかけて撮影する。
「ありがとう!さようなら!」
風がやんで、気温が上がると、なんとこんなところにも蚊の大群が現れたではないか。
ここでも炊事ができる状態ではない。
逃げよう。
カリブーにもいっぱい逢えたし、そろそろ南へ向かって発進しようか。

来た道を南へ戻る。日数をかけて、ゆっくり進んできたので、帰りはやや景色が違っているように思う。花が増えてきたようだ。

とてもブリザードが吹き荒れるところとは思えない、一見楽園に見える。(蚊がいなければ)

ブルックス山脈まで近づいてきた。不安定な空も近くなる。

厳冬期の気温とは軽く50度以上違っているだろう。いや、それどころではない。
ツンドラにいても、昼間太陽が元気なら、日中は20度にはなるだろう。

ツンドラで再度白夜撮影に挑戦。
いま、頭の上でオーロラが舞っているかもしれない。しかし明るくてみることはできない。
残念ながら、このあと曇ってしまった。

すっかり天候に見放されてしまった感じ。ツンドラを後にしよう。

ブルックス山脈を超えて、一気に南下する。
やや蚊が少なくなってきたようだ。炊事をしようか。

早くもブルーベリーが!
甘酸っぱくておいしい。

深夜のダルトンハイウェイ。左に見えるのが石油パイプライン。

行きと帰りとで花の色も密度も違っていた。
こんな景色を撮りたかった。

北極圏付近まで南下。朝の3時頃。
もっと南下すると、太陽がだんだん地平線下まで沈んでしまう。
いよいよ夏のアラスカ取材も終盤を迎える。
「夏のアラスカ<デナリハイウェイ編>」〜圧巻の山岳風景を求めて〜へ続く








COMMENT (3)
投稿者:kyo~.h 2010.07.19
あら〜!中垣さん、アラスカにいってるのですか?
私もカトマイに行ってたのですよ!17日に帰ってきました。
寒くて柳欄はあまり咲いてませんでした。
グリズリーしか見ませんでした。オオカミを見たかったです。
夏のアラスカもいいですね!
投稿者:taku 2010.07.21
はじめまして。
写真集とHP拝見させていただきました。
数々の素晴らしい写真で時間が経つのも忘れて見入ってます。
自然があまりにも雄大で、美しいものだと改めて感じる作品ばかりですね。
どうかお元気で、また良い写真のUP楽しみにしています。
投稿者:なかがきてつや 2010.07.21
kyo~.hさんへ、ご無沙汰してます。
カトマイに!
それはうらやましいですね。
僕はリンクスも見ましたよ!(撮影出来ず、悔しい・・)
今度一緒に行きましょう。3月は北極圏にサバイバルではなく、スペシャルツアー企画しています。
takuさんへ
アラスカで体験できる自然は純粋で、心をリフレッシュ&リセットさせてくれることも多いので、これを何とか皆さんのお茶の間にお届け出来ればと思いコツコツやっています。
自然って、いろんな気づきを提供してくれるものです。街明かりのない夜空は最高です。takuさんもいつか体験してみて欲しいです。また遊びに来て下さいね。